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市川泰憲(写真技術研究家、日本カメラ博物館)

  市川 泰憲(いちかわ やすのり)
1947年東京生まれ。中学・高校・大学と写真部に所属。1970年東海大学工学部光学工学科卒業。同年写真工業出版社入社、月刊「写真工業」編集長を経て、2009年より日本カメラ博物館に勤務しながら幅広い写真活動を続ける。日本写真協会会員。

■ブログ「写真にこだわる」開設しました
http://d.hatena.ne.jp/ilovephoto/

第三十回「シグマdp3クアトロを使ってみました」
 シグマのdpクアトロシリーズにdp3がラインナップされました。このdpクアトロシリーズはフルサイズよりAPS-Cと小面積でありながら、フルサイズの画素数より少なくても、高解像な写真が得られる特異なカメラなのです。従来、デジタルカメラの画質は、撮像素子の面積と画素数に大きく依存することは知られてきましたが、その常識が通用しないカメラなのです。
 このdpクアトロシリーズは、当初の発表時には、35mm判28mm相当画角のdp1クアトロ、45mm相当画角のdp2クアトロ、75mm相当画角のdp3クアトロの3機種だったのですが、去る2月の「CP+2015」直前の発表では、さらに21mm相当のdp0クアトロ、dp3クアトロに取り付けると90mm相当になるという専用の1.2倍のフロントコンバージョンレンズが追加発表されました。つまりシグマdpクアトロシリーズは、21・28・45・75・90mm相当と5焦点距離のラインナップとなったのです。
 【写真1】にはdp3クアトロと同時に発売されたシステムアクセサリーを示しました。左から、dp3クアトロカメラ本体、専用1.2×フロントコンバージョンレンズ、レンズフード、エクステンションフード。【写真2】は、dp3クアトロに、レンズフードとエクステンションフード装着した状態です。フードはdpクアトロシリーズ共通で樹脂製、エクステンションフードはdp3クアトロの専用の金属製で、どちらもしっかりと遮光溝が刻まれています。

【写真1】にはdp3クアトロと同時に発売されたシステムアクセサリー。左から、dp3クアトロカメラ本体、専用1.2×フロントコンバージョンレンズ、レンズフード、エクステンションフード。(写真をクリックすると大きくして見られます)

【写真2】dp3クアトロに、レンズフードとエクステンションフード装着。(写真をクリックすると大きくして見られます)



 【写真3】は、エクステンションフードを組み合わせた状態で、そのままカメラに収納できることを示しました。【写真4】では専用アクセサリーの「LCDビューファインダー」を取り付けたフル装備状態です。この状態で、決して重くはないのですが、ゴロゴロ感を十分に感じます。

【写真3】エクステンションフードを組み合わせた状態でカメラに収納。(写真をクリックすると大きくして見られます)

【写真4】dp3クアトロに専用アクセサリーのLCDビューファインダーを取り付けたフル装備状態。(写真をクリックすると大きくして見られます)




【写真5】dp3クアトロカメラ本体に、専用1.2×フロントコンバージョンレンズ装着。(写真をクリックすると大きくして見られます)

 【写真5】dp3クアトロカメラ本体に、専用1.2×フロントコンバージョンレンズ装着した状態です。この組み合わせで、特に専用フードは用意されていないようですが、構えた感じは悪くはありません。しかし、LCDビューファインダーを付けるとレンズ先端からアイピースまで約230mmもあり、ちょっとしたものです。
 ところでこのdpクアトロシリーズは、シグマ山木和人社長自らが変態カメラと語ったことは知る人ぞ知る逸話で、CP+2015会場でさらに変態カメラ度が増したと指摘されたことを、自社ブースのトークショーで楽しそうに話されていました。その変態ぶりですが、何をもって変態と呼んだのでしょうか。思うに、当初はカメラデザインそのものが『変体』であったと思うのですが、外付け光学ファインダーを用意して取り付けたあたりまではよかったのですが、LCDビューファインダーを用意し、21・28・45・75・90mmと『編隊』を組んだあたりから、確かにこれは『変態カメラ』だと僕自身も思うようになったのです。
 冗談はさておき、いくら外観デザインとシステム展開が変態であろうとも、基本的にはどれだけの写り具合を示すかという、カメラとして画質そのものがあるレベルを保持しているからこそ、存在価値があるのです。僕自身は、dp1クアトロがでたときに、「シグマdpクアトロの目指すところ」と題して、ブログのなかで画質、カメラデザイン(カメラの外観)、システムアクセサリーの展開から、撮像素子はAPS-C判でも、目指すところは中判カメラと位置づけましたが、その気配はますます濃厚になってきました。
 シグマクアトロシリーズはなぜ高画質なのか、当初は高画素だからだとか、光学ローパスフィルターがないからだとか、単純に考えていて、最近はさらにFoveonセンサーのクアトロ理論を理解しようと考えていました。しかし、それでは基本的には画素数の問題に関してのことだけになり、画質というか描写特性をいうのには画素数の多さだけではいまひとつピンときませんでした。ところが、最近Foveonセンサーは1画素に対し色情報の取得が垂直記録であるのに対し、いわゆるBayer(バイヤー)方式と呼ばれるRGGBフィルターに対応したマトリックス配置方式よりも、解像感が高くなるという説明が一部になされるようになりましたが、なんとなくこれなら理解できる説明なのです。
 とはいっても、実際はどうなのでしょうか。やはり難しい理論的な解明も大切ですが、まずは撮影結果を見てみなくてはわかりません。

●dp3クアトロと1.2テレコンバーターでの画質

【作例1】dp3クアトロ本体だけでの撮影結果です。実焦点距離は50mm で、dp3クアトロでは35mm判75mm相当画角が得られます。絞り優先AE(F5.6・1/400秒)、ISO100、AWB。(写真をクリックすると画素等倍で見られます)

【作例2】dp3クアトロに専用の1.2×テレコンバーターを取り付けて撮影したときの結果です。絞り優先AE(F5.6・1/500秒)、ISO100、AWB。(写真をクリックすると画素等倍で見られます)

【作例3】45mm相当のdp2クアトロで撮影。絞り優先AE(F5.6・1/640秒)、ISO100、AWB。(写真をクリックすると画素等倍で見られます)

【作例4】28mm相当のdp1クアトロで撮影。絞り優先AE(F5.6・1/640秒)、ISO100、AWB。(写真をクリックすると画素等倍で見られます)

 それではいつものように、まず英国大使館の正面玄関を撮影した結果を報告しましょう。
 【作例1】は、dp3クアトロ本体だけでの撮影結果です。dp3クアトロは35mm判75mm相当画角が得られるわけですが、実焦点距離は50mmでF2.8なのです。
 【作例2】は、dp3クアトロに専用の1.2×テレコンバーターを取り付けて撮影したときの結果です。テレコンバーターには、マスターレンズとボディの間に入れるリアコンバーター方式と本機のように撮影レンズの前に装着するフロントコンバーター方式があります。リアコンバーターは当然のこととしてレンズ交換式の一眼レフ用に多くあるわけですが、dp3クアトロはレンズ非交換式であるわけですからフロントコンバーター方式となるわけです。したがって実合成焦点距離は60mmとなり、もともとの画角が75mm相当だから、1.2倍掛けで、焦点距離90mm相当の画角となります。
 【作例1】と【作例2】は、三脚にカメラを載せて、同じ位置からほぼ同じ時間に撮影しましたが、コンバージョンレンズを取り付けても露出値は大きく変わりません。これが、フロントコンバージョンの特徴でもあるのです。【作例1】と【作例2】のフォーカスポイントは、建物中央上部のエンブレムです。それぞれは焦点距離が異なるわけですから、焦点距離の長いほうが撮影倍率は高くなり、解像度は高くなります。一般的に、コンバージョンレンズを付加すると画像の劣化が心配されますが、このコンバージョンレンズの場合には、マスターレンズ50mmF2.8の専用設計であること、テレコンバーターであるのでマスターレンズの画質の良い中央部だけを使うので、十分な高画質が得られるというのです。実際、写された結果を見ても、そのような心配はないことはわかります。特にこのシーンを準望遠クラスで撮影したのは初めてのことです。もともと画角的には35mm判フルサイズで焦点距離35mm相当を考えていたテストチャートシーンなのですが、改めて正面玄関上部に取り付けられているエンブレムはかなり工芸品的な仕上げがなされているのがわかりました。そして画素等倍にしてご覧いただければお分かりのように、そのエンブレムの加工の緻密さを感じさせるのは、撮影倍率の要素もありますが、フォビオンクアトロならではの画質ではないかと思うのです。
 ちなみに、CP+2015の発表時には、28mm相当のdp1クアトロに対し、さらに広角の21mmF2.8のdp0クアトロが開発発表されました。そしてこちらこそフロントコンバージョンレンズではとも思うわけですが、山木社長のCP+2015トークショーでのお話によると、実際シグマは21mmとなるフロントワイドコンバーターの試作をしたそうですが、ワイド系に対しては十分な性能が得られないということから断念し、専用レンズの付いたdp0クアトロが開発されたというのです。
 もともとこの英国大使館の正面玄関での撮影は、いつも定点観測的に定位置から行っていますが、基本的には晴天の日の午前10:30前後と決めていますので、他社、他機種のカメラ性能を横断的に概略として知るには本シリーズの他項をご覧いただければ幸いです。とはいっても、dpクアトロシリーズに興味を持っている人にとっては、どの焦点距離が自分にマッチするかというのも大いに気になるでしょうから、【作例3】に45mm相当のdp2クアトロ、【作例4】に28mm相当のdp1クアトロのカットも参考までに掲載しました。ここでお断りしたいのは、比較画像は同時期の撮影ではなく、あくまでも参考データであり、画角の違いをまず実感していただこうというわけです。もちろん画質を比較検討しても問題ない範囲です。











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