京都ライカブティック(Kyoto Leica Boutique) - photographer 第十七回「フォトキナ2012新製品の「ライカS」を使ってみた」
ライカに始まりライカに終わる

市川泰憲(写真技術研究家、日本カメラ博物館)

  市川 泰憲(いちかわ やすのり)
1947年東京生まれ。中学・高校・大学と写真部に所属。1970年東海大学工学部光学工学科卒業。
同年写真工業出版社入社、月刊「写真工業」編集長を経て、2009年より日本カメラ博物館に勤務しながら幅広い写真活動を続ける。日本写真協会、日本写真芸術学会、日本写真学会会員、元東京工芸大学芸術学部写真学科非常勤講師

■ブログ「写真にこだわる」開設しました
http://d.hatena.ne.jp/ilovephoto/

第十八回「異種全面対決 ペンタックスQからライカMまで」
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 まず定点観測の場所ですが、以前この場所は、僕のテストチャートとして利用していると紹介したことがあります。千代田区半蔵門にある英国大使館の正面玄関です。この場所の正面に立つのですが、この位置だけはいつも大きく移動はありません。三脚を車止めのフェンスにぎりぎりにあて、左右は建物正面中央の紋章がちょうどくる位置にと決めているので、撮影位置は大きく動いていないはずです。この位置から、気になるカメラを入手したら、まずは撮影してみるのです。

●撮影条件をそろえる
 その時の、撮影条件は、絞りはF5.6に設定して絞り優先AEで撮影するのです。ISO感度、WBは自動、ピントを合わせる部分は建物中央屋根ひさし下の紋章、ライカM9のように光学式の距離計(ピント合わせ)部分があるものは、その位置に紋章を配してピントを合わせました。一眼レフも同じようにして合わせますが、AFポイントが多点あるものやフォーカス位置を動かせるのは上のほうの合焦フレームで合わせたり、場合によっては一眼レフでもライブビュー撮影を行ってピント合わせしているのもあります。ミラーレス機も同様に、ライブビューでピントを合わせて行っています。つまり、ピントは画面のどの位置に紋章があっても、そこに合わせてあるということです。
 また、理想をいうと同じ日の、同じ時間帯に一斉に撮影できればいいのですが、マンパワーとカメラを用意する都合上、それはできないので、晴天の日、午前10時から11時の間と決めました。それでも、長期にわたるのですから、春先だったり、真夏や、秋そして冬とあるわけですが、特に春先の春霞の時期は見た目になんとなくもやった感じがするのです。

●画質はなんで決まるのか
 ところで、画質は何で決まるのでしょうか? 当然のこととして画面サイズが大きくて、画素数が多ければ高画質となります。またカメラが同じでも、レンズが異なれば画質が変わります。また、撮影倍率が違えばやはり画質は違います。ここではいつも同じ場所から撮影しているわけですから、焦点距離や画角が関係してきます。ですから同じ焦点距離、同じ画面サイズ、画素数であるなら、モニター上での比較も可能ですが、画素等倍にすべてを持っていくと、画角や画素数が異なるものでは相対的な画質比較は難しくなるわけです。
 特に画素等倍の場合には、どんなに大きなモニターであっても画面のある部分を拡大して見ているわけですから、画面全体の画質が見えなくなるので注意が必要です。
 僕の画質評価法は、同じ条件で数カット撮影し、モニター上でピントがベストと思われたカットをA3ノビに、ノートリミングでプリントします。これで比較するのです。フィルムカメラの時代には8×10か4切ぐらいに注意深く引伸ばして、目を凝らして、ルーペなども併用して判断したのですが、デジタルでは家庭でも簡単にA3ノビにプリントできるのですからこちらのほうが簡単です。プリンターは比較しようとするなら、色や解像度のこともありますので同じプリンターを使うのがいいでしょう。またプリンター用紙は微妙な解像感を判断するために、光沢を選ぶようにしてください。
 ここでお見せするデータは、基本的にはわざと撮影したままですが、自分の作品を仕上げるときには、さまざまな微調整が必要となってくることはいうまでもありません。もしこの中にあるもの同士を比較してみたい場合には、とりあえずは画像データをダウンロードしてプリントして比較してください。なお、ここに掲載されているデータは、ダウンロードして個人でプリントし、評価する範囲ならば問題ありませんが、無断で商業目的に使用することは禁止されておりますので、必要ならお問い合わせください。
 それでは、以下にそれぞれの機材写真と撮影データを紹介します。